モグラボラトリ日誌

森薫のウェブ・サイト「モグラボラトリ」のブログ&コラムです。

【ブログ&コラム】世界を旅するグランド・ピアノ

先日某大型楽器店に行ったところ、アジアの国々からの観光客とおぼしき人たちがたくさんいた。まあそれは特に驚くことでもないのだが、グランドピアノのフロアに行くと、そこにも次々にやってきて、熱心にピアノの試奏や選定をしている。

店員さんに尋ねたところ、海外からの観光客で、日本でグランドピアノを購入していく人は割といる、とのこと。お店(都内)で買って、お店が港までトラックで配送し、そこからはお客さんが自力で手配して、住んでいる国まで船で輸送、という流れになるそうだ。

ピアノはヨーロッパの工房でつくられる。その楽器店にあったのはベーゼンフドルファーだったのでオーストリアでつくられたとして、そこから日本にやってきて、そしてアジア各国に・・・ということになる。どうやって運ぶのか(そのまま運ぶのか、解体して運ぶのか等)はわからないが、大きなピアノがぶーんぶーん・どんぶらこっこと世界を旅して、誰かの家やホールに迎えられ、活躍するようになる、と想像するとなんだか愉快な気持ちになる。

・・・ところでこの文章を書いていて思ったが、楽器を擬人化したくなるのは、音楽をやっている人間の癖なんだろうか。私は性別なしで擬人化するのだが、恋愛対象となる性で擬人化する人も周りに結構いる。男性ギタリストが、ギターを女性としてみる、といったような感じで。楽器を見ながらさもいとおしそうに、「コイツは結構わがままでさ・・・」みたいなたわごと(失礼)を言っている人を見たことも、一度や二度ではない。

そして私は擬人化だけでなく、感情移入もめちゃめちゃしてしまう。少し前に学生が音楽室のグランド・ピアノの蓋を乱暴に閉めたときなんてもう、「ちょっとアンタ!!この子に何してくれてんのよっ!!」ぐらいの勢いで飛んでいったし、蓋をなでなでしながら心の中で「かわいそうに、ごめんね・・・」と謝った。でもそういう人、老若男女問わず、結構いるような気がするんだなー。